文豪用例帳

そして、自分には手の届かない一流の藝者だつたので、最初からあきらめてゐたゞけに、木村の話は意外でもあり、同情の程度も大きかつた。

木村は私にさう云はれると、感極まつて例の「君、握手しよう」を連発しながら、何度も/\私の手を握り締めた。

二人はすつかり意気投合して好い気持でメートルを上げた。

谷崎潤一郎 『青春物語』