牡丹屋といへば、いまでこそ昔ほどの羽ぶりは利かなかつたが、隣りの村の本陣。
――そしておえふの父の草平は、たとへ本家すぢではないとはいへ、いろいろ牡丹屋のためにも、村のためにも盡してきた人で、いまではもう押しも押されないその村の顏役になつてゐた。
おえふが、親の云ふなりになつて、蔦ホテルに嫁いでいつたのは、明治の末、かの女が十九の春だつた。