銀行やクレジットカードなどの暗証番号について、愛称番号や相性番号と言っている人がいるそうで、確かに、SNSを見てみると、数少ないながら愛称番号や相性番号と言っている人がいます。
なぜそういった覚え間違いが生じたのでしょう。もしかしたら、文字で見るのではなく、音で覚えた結果、「あんしょう」ではなく「あいしょう」という聞き間違いが生じ、意味がつながりそうな漢字を自然と当てはめたのかもしれません。
考えてみれば、「暗証」という言葉は、暗証番号のとき以外ではほとんど使わず、単独で「暗証」と言われてもピンときません。他の使用例としては、仏教用語が挙げられるくらいです。
暗証は仏教語である。禅家で用いるところでは、経論の理解や研究を軽視し、座禅などの実践だけで悟りに到達できるとすることをいう。
座禅のみをしていたら悟りに至れると思い込み、経典の研究を疎かにする態度を、「暗証」と言うようです。というわけで、日常に決して馴染みのある言葉ではなく、文豪の小説や随筆などを調べても出てきませんでした。
その点、愛称番号は、まるでその空間の愛称(親しみを込めて呼ぶニックネーム)としての番号のようですし、相性番号は、数字とこの空間の相性がいい、ぴったり重なる番号みたいなニュアンスで捉えられる面があります。
そのため、「暗証」よりも馴染みやすく、意識に定着していったのかもしれません。
明らかな誤用ではあるものの、なかなか空耳的な奥深い誤用の一つです。