こないだ─方言? 間違い? 「この間」との関係と意味

「こないだ」の意味

日常会話では、「こないだ映画を見に行ってさ」「こないだ誰々と会ったとき」のように、「こないだ」という言葉がごく自然に使われます。

ところが、話すときには何の違和感もないこの「こないだ」も、文章に書き起こすと「あれ、これって正しい表記だっけ」と一瞬迷ってしまうことがあります。

言葉遣いとして誤っているのか、若者言葉なのか、それとも方言なのか――どことなく落ち着かない気持ちになる人も多いのではないでしょうか。

でも実際のところ、「こないだ」は「先日のこと」を意味する、れっきとした正しい表記で、「このあいだ」が変化した言葉です。

こないだ こなひだ【此間】

〘名〙 (「このあいだ」の変化した語)
① ちかごろ。このごろ。最近。
② 先日。過日。せんだって。さきごろ。

精選版 日本国語大辞典

辞書を見ても、「こないだ」は誤用ではなく、正式な表記として扱われていることが分かります。

小説にも出てくる「こないだ」

では、「こないだ」という言い方はいつごろから使われ始めたのでしょうか。

その響きの軽さから、比較的新しい表現のようにも感じられますが、実際には古くから存在していたようで、夏目漱石や堀辰雄といった文豪の小説のなかにもその使用例が見られます。



ただし、小説の中の「こないだ」も、多くは会話文――つまり話し言葉の場面――で使われています。そのため、ビジネスシーンなどのフォーマルな場や、きちんとした文章を書く際には避けたほうが無難かもしれません。

言い換えるなら、「この間」「先頃」「先日」「先達(せんだって)」などが類語として挙げられます。敬語や丁寧な言い回しが求められる場面では、「こないだ」ではなく「先日」などを選ぶのが安全でしょう。

「こないだ」は方言か

ところで、「こないだ」を検索してみると、「関西弁ではないか」「どこかの地域の方言ではないか」という声も多く見受けられ、方言だとする説明にもたびたび行き当たります。

もともと方言として生まれ、話し言葉として全国に広まっていったのかどうか、その詳しい経緯は定かではありません。

とは言え、辞書において「こないだ」が「『このあいだ』の音が変化した語」として記載されている以上、少なくとも現在では全国的に使われている言葉だと考えてよいでしょう。

なお、「こないだ」自体が方言かどうかはひとまず置くとしても、訛りという点では地域差があります。「こねえだ」と発音されたり、アクセントの位置が変わったりと、イントネーションには地域ごとの違いが見られます。

北海道では「こないだ」(↓↑↓↓)というイントネーションになるのに対し、本州では主に「こないだ」(↓↑↑↑)が使われるようです。

ただ、福井の方言を紹介する動画を見ると、同じ本州内でもまた違った訛りが感じられ、地域によってさらに細かな差異があるのかもしれません。