これは夫に知らせてならないと思う事、または隠しておく方が便宜だときめた事、そういう場合になると、彼女は全く津田の手にあまる細君であった。
彼女が柔順であればあるほど、津田は彼女から何にも掘り出す事ができなかった。
彼女と小林の間に昨日どんなやりとりが起ったか、それはお秀の騒ぎで委細を訊く暇もないうちに、時間が経ってしまったのだから、事実やむをえないとしても、もしそういう故障のない時に、津田から詳しいありのままを問われたら、お延はおいそれと彼の希望通り、綿密な返事を惜まずに、彼の要求を満足させたろうかと考えると、そこには大きな疑問があった。