文豪用例帳

作家別 名言・名文

夏目漱石の名言・名文

夏目漱石は、四十を前に小説を書き始め、没するまでの十年ほどで日本の近代小説の一つの形をつくった作家である。江戸に生まれ、帝国大学で英文学を学び、イギリスに留学した。ロンドンでの孤独な二年を経て帰国し、『吾輩は猫である』『坊っちゃん』で世に出る。

やがて大学の職を辞して朝日新聞社に入り、新聞連載を場に職業作家として書き続けた。『三四郎』『それから』『門』では恋愛や家庭を通して近代に生きる人間の孤独とためらいを描き、『こころ』では罪を抱えて生きることの重さを問うた。

夏目漱石 1867–1916
近代日本文学を代表する小説家。イギリス留学の経験を経て、近代的自我と人間関係の葛藤を描いた。代表作に『こころ』『三四郎』『吾輩は猫である』など。

名言・名文

心は焦る、気は揉める、手は離せない。夏目漱石『坑夫』 愛の心に映る宇宙は深き情けの宇宙である。夏目漱石『野分』 今の身と、今の心は自分にさえ気の毒である。夏目漱石『虞美人草』 一人で零落れるのは二人で零落れるのよりも淋しいもんだ。夏目漱石『坑夫』 涙が出るうちは笑う事も出来るにきまってる。夏目漱石『坑夫』 すべての人は生きねばならぬ。夏目漱石『倫敦塔』 皮だけで生きている人間は、土だけで出来ている人形とそう違わない。夏目漱石『虞美人草』 あえて死を怖るるとは云わず、ただ生きねばならぬ。夏目漱石『倫敦塔』 行ける所まで行くのが人生である。夏目漱石『野分』 私は妻のために、命を引きずって世の中を歩いていたようなものです。夏目漱石『こころ』 事を成すのが困難であるから幸福である。夏目漱石『野分』 それをほかの言葉でいうと自分一人ではとても生きていられない人間になりつつあるのである。夏目漱石『道楽と職業』 研究心の強い学問好きの人は、万事を研究する気で見るから、情愛が薄くなるわけである。夏目漱石『三四郎』 Kはこの人間らしいという言葉のうちに、私が自分の弱点のすべてを隠しているというのです。夏目漱石『こころ』 世界滅却の日をただ一人生き残った心持である。夏目漱石『虞美人草』 詫びながら自分が非常に下等な人間のように見えて、急に厭な心持になるのです。夏目漱石『こころ』 自分はそれまで氷嚢は頭か心臓の上でなければ載せるものでないとばかり信じていたのである。夏目漱石『行人』 「愛嬌と云うのはね、――自分より強いものを斃す柔かい武器だよ」夏目漱石『虞美人草』 私は死ぬ前にたった一人で好いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。夏目漱石『こころ』 呑気と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする。夏目漱石『吾輩は猫である』