見方によって、好い都合にもなり、また悪い跋にもなるこの機会は、彼女から話しのしにくい年寄を追い除けてくれたと同時に、ただ一人面と向き合って、当の敵のお秀と応対しなければならない不利をも与えた。
お延に知れていないこの情実は、訪問の最初から彼女の勝手を狂わせた。
いつもなら何をおいても小さな髷に結った母が一番先へ出て来て、義理ずぐめにちやほやしてくれるところを、今日に限って、劈頭にお秀が顔を出したばかりか、待ち設けた老女はその後からも現われる様子をいっこう見せないので、お延はいつもの予期から出てくる自然の調子をまず外させられた。