彼女がこんなに迷っているとはまるで気のつかない津田は、この時床の上に起き上って、平気で看護婦の持って来た膳に向いつつあった。
先刻お秀から電話のかかった時、すでにお延の来訪を予想した彼は、吉川夫人と入れ代りに細君の姿を病室に見るべく暗に心の調子を整えていたところが、その細君は途中から引き返してしまったので、軽い失望の間に、夕食の時間が来るまで、待ち草臥れたせいか、看護婦の顔を見るや否や、すぐ話しかけた。
「ようやく飯か。
彼女がこんなに迷っているとはまるで気のつかない津田は、この時床の上に起き上って、平気で看護婦の持って来た膳に向いつつあった。
先刻お秀から電話のかかった時、すでにお延の来訪を予想した彼は、吉川夫人と入れ代りに細君の姿を病室に見るべく暗に心の調子を整えていたところが、その細君は途中から引き返してしまったので、軽い失望の間に、夕食の時間が来るまで、待ち草臥れたせいか、看護婦の顔を見るや否や、すぐ話しかけた。
「ようやく飯か。