汽車が出る時、黙って丁寧に会釈をした書生に、「どうぞ宜しく」と挨拶を返した津田は、比較的込み合わない車室の一隅に、ゆっくりと腰をおろしながら、「やっぱりお延に来て貰わない方がよかったのだ」と思った。
百六十八
お延の気を利かして外套の隠袋へ入れてくれた新聞を津田が取り出して、いつもより念入りに眼を通している頃に、窓外の空模様はだんだん悪くなって来た。
汽車が出る時、黙って丁寧に会釈をした書生に、「どうぞ宜しく」と挨拶を返した津田は、比較的込み合わない車室の一隅に、ゆっくりと腰をおろしながら、「やっぱりお延に来て貰わない方がよかったのだ」と思った。
百六十八
お延の気を利かして外套の隠袋へ入れてくれた新聞を津田が取り出して、いつもより念入りに眼を通している頃に、窓外の空模様はだんだん悪くなって来た。