彼は床の間の上にある別の本箱の中から、美濃紙版の浅黄の表紙をした古い本を一、二冊取り出した。
そうしてあたかも健三を『江戸名所図絵』の名さえ聞いた事のない男のように取扱った。
その健三には子供の時分その本を蔵から引き摺り出して来て、頁から頁へと丹念に挿絵を拾って見て行くのが、何よりの楽みであった時代の、懐かしい記憶があった。
彼は床の間の上にある別の本箱の中から、美濃紙版の浅黄の表紙をした古い本を一、二冊取り出した。
そうしてあたかも健三を『江戸名所図絵』の名さえ聞いた事のない男のように取扱った。
その健三には子供の時分その本を蔵から引き摺り出して来て、頁から頁へと丹念に挿絵を拾って見て行くのが、何よりの楽みであった時代の、懐かしい記憶があった。