口数の寡ない細君は、自分の生家に関する詳しい話を今まで夫の耳に入れずに通して来たのである。
職に離れて以来の不如意を薄々知っていながら、まさかこれほどとも思わずにいた健三は、急に眼を転じてその人の昔を見なければならなかった。
彼は絹帽にフロックコートで勇ましく官邸の石門を出て行く細君の父の姿を鮮やかに思い浮べた。
口数の寡ない細君は、自分の生家に関する詳しい話を今まで夫の耳に入れずに通して来たのである。
職に離れて以来の不如意を薄々知っていながら、まさかこれほどとも思わずにいた健三は、急に眼を転じてその人の昔を見なければならなかった。
彼は絹帽にフロックコートで勇ましく官邸の石門を出て行く細君の父の姿を鮮やかに思い浮べた。