新らしく世帯を有って、新らしい仕事を始める人に、あり勝ちな急忙しなさと、自分達を包む大都の空気の、日夜劇しく震盪する刺戟とに駆られて、何事をもじっと考える閑もなく、また落ちついて手を下す分別も出なかった。
夜汽車で新橋へ着いた時は、久しぶりに叔父夫婦の顔を見たが、夫婦とも灯のせいか晴れやかな色には宗助の眼に映らなかった。
途中に事故があって、着の時間が珍らしく三十分ほど後れたのを、宗助の過失ででもあるかのように、待草臥れた気色であった。
新らしく世帯を有って、新らしい仕事を始める人に、あり勝ちな急忙しなさと、自分達を包む大都の空気の、日夜劇しく震盪する刺戟とに駆られて、何事をもじっと考える閑もなく、また落ちついて手を下す分別も出なかった。
夜汽車で新橋へ着いた時は、久しぶりに叔父夫婦の顔を見たが、夫婦とも灯のせいか晴れやかな色には宗助の眼に映らなかった。
途中に事故があって、着の時間が珍らしく三十分ほど後れたのを、宗助の過失ででもあるかのように、待草臥れた気色であった。