御米は返事もせずに、しばらく黙っていたが、細い腮を襟の中へ埋めたまま、上眼を使って、
「小六さんは、まだ私の事を悪んでいらっしゃるでしょうか」と聞き出した。
宗助が東京へ来た当座は、時々これに類似の質問を御米から受けて、その都度慰めるのにだいぶ骨の折れた事もあったが、近来は全く忘れたように何も云わなくなったので、宗助もつい気に留めなかったのである。
御米は返事もせずに、しばらく黙っていたが、細い腮を襟の中へ埋めたまま、上眼を使って、
「小六さんは、まだ私の事を悪んでいらっしゃるでしょうか」と聞き出した。
宗助が東京へ来た当座は、時々これに類似の質問を御米から受けて、その都度慰めるのにだいぶ骨の折れた事もあったが、近来は全く忘れたように何も云わなくなったので、宗助もつい気に留めなかったのである。