それまでは月に一度こちらから清に家賃を持たしてやると、向からその受取を寄こすだけの交渉に過ぎなかったのだから、崖の上に西洋人が住んでいると同様で、隣人としての親みは、まるで存在していなかったのである。
宗助が文庫を届けた日の午後に、坂井の云った通り、刑事が宗助の家の裏手から崖下を検べに来たが、その時坂井もいっしょだったので、御米は始めて噂に聞いた家主の顔を見た。
髭のないと思ったのに、髭を生やしているのと、自分なぞに対しても、存外丁寧な言葉を使うのが、御米には少し案外であった。
それまでは月に一度こちらから清に家賃を持たしてやると、向からその受取を寄こすだけの交渉に過ぎなかったのだから、崖の上に西洋人が住んでいると同様で、隣人としての親みは、まるで存在していなかったのである。
宗助が文庫を届けた日の午後に、坂井の云った通り、刑事が宗助の家の裏手から崖下を検べに来たが、その時坂井もいっしょだったので、御米は始めて噂に聞いた家主の顔を見た。
髭のないと思ったのに、髭を生やしているのと、自分なぞに対しても、存外丁寧な言葉を使うのが、御米には少し案外であった。