夫婦と坂井とは泥棒の這入らない前より、これだけ親しみの度が増したようなものの、それ以上に接近しようと云う念は、宗助の頭にも、御米の胸にも宿らなかった。
利害の打算から云えば無論の事、単に隣人の交際とか情誼とか云う点から見ても、夫婦はこれよりも前進する勇気を有たなかったのである。
もし自然がこのままに無為の月日を駆ったなら、久しからぬうちに、坂井は昔の坂井になり、宗助は元の宗助になって、崖の上と崖の下に互の家が懸け隔るごとく、互の心も離れ離れになったに違なかった。
夫婦と坂井とは泥棒の這入らない前より、これだけ親しみの度が増したようなものの、それ以上に接近しようと云う念は、宗助の頭にも、御米の胸にも宿らなかった。
利害の打算から云えば無論の事、単に隣人の交際とか情誼とか云う点から見ても、夫婦はこれよりも前進する勇気を有たなかったのである。
もし自然がこのままに無為の月日を駆ったなら、久しからぬうちに、坂井は昔の坂井になり、宗助は元の宗助になって、崖の上と崖の下に互の家が懸け隔るごとく、互の心も離れ離れになったに違なかった。