客の謝罪には一向同情を表しておらん。
「それからボイにおいトチメンボーを二人前持って来いというと、ボイがメンチボーですかと聞き直しましたが、先生はますます真面目な貌でメンチボーじゃないトチメンボーだと訂正されました」「なある。
そのトチメンボーという料理は一体あるんですか」「さあ私も少しおかしいとは思いましたがいかにも先生が沈着であるし、その上あの通りの西洋通でいらっしゃるし、ことにその時は洋行なすったものと信じ切っていたものですから、私も口を添えてトチメンボーだトチメンボーだとボイに教えてやりました」「ボイはどうしました」「ボイがね、今考えると実に滑稽なんですがね、しばらく思案していましてね、はなはだ御気の毒様ですが今日はトチメンボーは御生憎様でメンチボーなら御二人前すぐに出来ますと云うと、先生は非常に残念な様子で、それじゃせっかくここまで来た甲斐がない。