近頃は勝手口の横を庭へ通り抜けて、築山の陰から向うを見渡して障子が立て切って物静かであるなと見極めがつくと、徐々上り込む。
もし人声が賑かであるか、座敷から見透かさるる恐れがあると思えば池を東へ廻って雪隠の横から知らぬ間に椽の下へ出る。
悪い事をした覚はないから何も隠れる事も、恐れる事もないのだが、そこが人間と云う無法者に逢っては不運と諦めるより仕方がないので、もし世間が熊坂長範ばかりになったらいかなる盛徳の君子もやはり吾輩のような態度に出ずるであろう。
近頃は勝手口の横を庭へ通り抜けて、築山の陰から向うを見渡して障子が立て切って物静かであるなと見極めがつくと、徐々上り込む。
もし人声が賑かであるか、座敷から見透かさるる恐れがあると思えば池を東へ廻って雪隠の横から知らぬ間に椽の下へ出る。
悪い事をした覚はないから何も隠れる事も、恐れる事もないのだが、そこが人間と云う無法者に逢っては不運と諦めるより仕方がないので、もし世間が熊坂長範ばかりになったらいかなる盛徳の君子もやはり吾輩のような態度に出ずるであろう。