迷亭君は今度は右の袂の中から赤いケース入りの鋏を取り出して細君に見せる。
「奥さん、帽子はそのくらいにしてこの鋏を御覧なさい。
これがまたすこぶる重宝な奴で、これで十四通りに使えるんです」この鋏が出ないと主人は細君のためにパナマ責めになるところであったが、幸に細君が女として持って生れた好奇心のために、この厄運を免かれたのは迷亭の機転と云わんよりむしろ僥倖の仕合せだと吾輩は看破した。
迷亭君は今度は右の袂の中から赤いケース入りの鋏を取り出して細君に見せる。
「奥さん、帽子はそのくらいにしてこの鋏を御覧なさい。
これがまたすこぶる重宝な奴で、これで十四通りに使えるんです」この鋏が出ないと主人は細君のためにパナマ責めになるところであったが、幸に細君が女として持って生れた好奇心のために、この厄運を免かれたのは迷亭の機転と云わんよりむしろ僥倖の仕合せだと吾輩は看破した。