これは胎毒のためだとも云うし、あるいは疱瘡の余波だとも解釈されて、小さい時分はだいぶ柳の虫や赤蛙の厄介になった事もあるそうだが、せっかく母親の丹精も、あるにその甲斐あらばこそ、今日まで生れた当時のままでぼんやりしている。
吾輩ひそかに思うにこの状態は決して胎毒や疱瘡のためではない。
彼の眼玉がかように晦渋溷濁の悲境に彷徨しているのは、とりも直さず彼の頭脳が不透不明の実質から構成されていて、その作用が暗憺溟濛の極に達しているから、自然とこれが形体の上にあらわれて、知らぬ母親にいらぬ心配を掛けたんだろう。