伯父さんこれが苦沙弥君です」
「いや始めて御目にかかります、毎度迷亭が出て御邪魔を致すそうで、いつか参上の上御高話を拝聴致そうと存じておりましたところ、幸い今日は御近所を通行致したもので、御礼旁伺った訳で、どうぞ御見知りおかれまして今後共宜しく」と昔し風な口上を淀みなく述べたてる。
主人は交際の狭い、無口な人間である上に、こんな古風な爺さんとはほとんど出会った事がないのだから、最初から多少場うての気味で辟易していたところへ、滔々と浴びせかけられたのだから、朝鮮仁参も飴ん棒の状袋もすっかり忘れてしまってただ苦しまぎれに妙な返事をする。