何も異性間に不人望な主人をこの際ことさらに暴露する必要もないのだが、本人において存外な考え違をして、全く年廻りのせいで細君に好かれないのだなどと理窟をつけていると、迷の種であるから、自覚の一助にもなろうかと親切心からちょっと申し添えるまでである。
言いつけられた時刻に、時刻がきたと注意しても、先方がその注意を無にする以上は、向をむいてうんさえ発せざる以上は、その曲は夫にあって、妻にあらずと論定したる細君は、遅くなっても知りませんよと云う姿勢で箒とはたきを担いで書斎の方へ行ってしまった。
やがてぱたぱた書斎中を叩き散らす音がするのは例によって例のごとき掃除を始めたのである。