言いつけられた時刻に、時刻がきたと注意しても、先方がその注意を無にする以上は、向をむいてうんさえ発せざる以上は、その曲は夫にあって、妻にあらずと論定したる細君は、遅くなっても知りませんよと云う姿勢で箒とはたきを担いで書斎の方へ行ってしまった。
やがてぱたぱた書斎中を叩き散らす音がするのは例によって例のごとき掃除を始めたのである。
一体掃除の目的は運動のためか、遊戯のためか、掃除の役目を帯びぬ吾輩の関知するところでないから、知らん顔をしていれば差し支えないようなものの、ここの細君の掃除法のごときに至ってはすこぶる無意義のものと云わざるを得ない。