とうていうちのものさえ膳に向わぬさきから、猫の身分をもって朝めしに有りつける訳のものではないが、そこが猫の浅ましさで、もしや煙の立った汁の香が鮑貝の中から、うまそうに立ち上っておりはすまいかと思うと、じっとしていられなくなった。
はかない事を、はかないと知りながら頼みにするときは、ただその頼みだけを頭の中に描いて、動かずに落ちついている方が得策であるが、さてそうは行かぬ者で、心の願と実際が、合うか合わぬか是非とも試験して見たくなる。
試験して見れば必ず失望するにきまってる事ですら、最後の失望を自ら事実の上に受取るまでは承知出来んものである。