実をいうと私の都合もあり、又活字組込の関係もありして、長短十八篇の間を休み休み通り抜けたのは、批評を依頼した貴方にも御気の毒ですし、またそれを御約束した私にも多少の不便は出て来たに相違ありませんが、此陥欠を避ける手段は御互になかったのですから、それは双方で我慢する事にして、私の御作に対するざっとした考え丈を申し上げます。
まずあなたの特色として第一に私の眼に映ったのは、饒かな情緒を濃やかにしかも霧か霞のように、ぼうっと写し出す御手際です。
何故ぼうっとしているかというと、あなたの筆が充分に冴えているに拘わらず、あなたの描く景色なり、小道具なりが、朧月の暈のように何等か詩的な聯想をフリンジに帯びて、其本体と共に、読者の胸に流れ込むからです。