だから夫がまとまらない上に、筋が通らないとか、又は主人公の哲学観などが露骨に出てくると、一方が一方を殺して、少し平生の御手際に似合わない段違いのものが出来はしまいかと疑われます。
「荒布橋」とか、「岡田君の日記」とか、「六月の夜」の一部分とかになると、其所に手荒で変に不調和なものが露われているようです。
其代りよし気分丈のものでも筋のまとまらない「河岸の夜」といったような、(其中には六ずかしい議論も織り込まれてはいるが)ただ装飾的で左程他の情緒をそそる事の出来ないものもあると申し添えなければならなくなります。