ことに前者に於て、ある男とある女の性的関係の階級等差が、あれ程細かく書いてありながら、些とも卑猥な心持を起させずに、ただ精緻な観察其物として、他をぐいぐい引き付けて行く処などは、何うしても旨いと云わなければなりません。
此小説は主人公が東京へ出てからの心の変化に、前半程緻密な且つ穏当な、芸術的描写が欠けているため、多少のむらがあると思いますが、世間でいう小説の意味から批判すると、或は圧巻の作かも知れません。
要するに貴方の書き方は絹漉し豆腐のように、又婦人の餅肌のように柔らかなのです、上部ばかり手触りが好いのかと思うと、中味迄ふくふくしているのです。