「知らないね」
「九時だよ。
これから秋の夜長をたった一人、山道八丁を大平と云う所まで登るのだが、平生なら臆病な僕の事だから、恐しくってたまらないところだけれども、一心不乱となると不思議なもので、怖いにも怖くないにも、毛頭そんな念はてんで心の中に起らないよ。
「知らないね」
「九時だよ。
これから秋の夜長をたった一人、山道八丁を大平と云う所まで登るのだが、平生なら臆病な僕の事だから、恐しくってたまらないところだけれども、一心不乱となると不思議なもので、怖いにも怖くないにも、毛頭そんな念はてんで心の中に起らないよ。