何も浮で来なかったので、一昨年の元日の事を書いた。
一昨年の元日に虚子が年始に来たから、東北と云う謡をうたったところ、虚子が鼓を打ち出したので、余の謡が大崩になったという一段を編輯へ廻した。
実は本当の元日なら、余の謡はもっと上手になってる訳だから、其の上手になった所を有の儘に告白したかったのだが、如何せん、筆を執ってる時は、元日にまだ間があったし、且虚子が年始に見えるとも見えないとも極まっていなかった上に、謡をうたう事も全然未定だったので、営業上已を得ず一年前の極めて告白し難い所を告白したのである。