夫でペリカンの方でも半ば余に愛想を尽かし、余の方でも半ばペリカンを見限って、此正月「彼岸過迄」を筆するときは又一と時代退歩して、ペンとそうしてペン軸の旧弊な昔に逆戻りをした。
其時余は始めて離別した第一の細君を後から懐かしく思う如く、一旦見棄たペリカンに未練の残っている事を発見したのである。
唯のペンを用い出した余は、印気の切れる度毎に墨壺のなかへ筆を浸して新たに書き始める煩わしさに堪えなかった。
夫でペリカンの方でも半ば余に愛想を尽かし、余の方でも半ばペリカンを見限って、此正月「彼岸過迄」を筆するときは又一と時代退歩して、ペンとそうしてペン軸の旧弊な昔に逆戻りをした。
其時余は始めて離別した第一の細君を後から懐かしく思う如く、一旦見棄たペリカンに未練の残っている事を発見したのである。
唯のペンを用い出した余は、印気の切れる度毎に墨壺のなかへ筆を浸して新たに書き始める煩わしさに堪えなかった。