まだ床を離れるほどに足腰が利かないうちに、三山君に遺った詩が、すでにこの太平の趣をうたうべき最後の作ではなかろうかと、自分ながら掛念しているくらいである。
「思い出す事など」は平凡で低調な個人の病中における述懐と叙事に過ぎないが、その中にはこの陳腐ながら払底な趣が、珍らしくだいぶ這入って来るつもりであるから、余は早く思い出して、早く書いて、そうして今の新らしい人々と今の苦しい人々と共に、この古い香を懐かしみたいと思う。
修善寺にいる間は仰向に寝たままよく俳句を作っては、それを日記の中に記け込んだ。