もっとも仙に化するための注意であるから、普通の深呼吸だの冷水浴だのとは違って、すこぶる抽象的で、実際解るとも解らぬとも片のつかぬ文字であるが、病中の余にはそれが面白かったと見えて、その二三節をわざわざ日記の中に書き抜いている。
日記を検べて見ると「静これを性となせば心其中にあり、動これを心となせば性其中にあり、心生ずれば性滅し、心滅すれば性生ず」というようなむずかしい漢文が曲がりくねりに半頁ばかりを埋めている。
その時の余は印気の切れた万年筆の端を撮んで、ペン先へ墨の通うように一二度揮るのがすこぶる苦痛であった。