この下女は伊東の生れで、浜辺か畑中に立って人を呼ぶような大きな声を出す癖のあるすこぶる殺風景な女であったが、雨に鎖された山の中の宿屋で、こういう昔の物語めいた、嘘か真か分らないことを聞かされたときは、御伽噺でも読んだ子供の時のような気がして、何となく古めかしい香に包まれた。
その上家が流されたのがどこで、宝物を掘出したのがどこか、まるで不明なのをいっこう構わずに、それが当然であるごとくに話して行く様子が、いかにも自分の今いる温泉の宿を、浮世から遠くへ離隔して、どんな便りも噂のほかには這入ってこられない山里に変化してしまったところに一種の面白味があった。
とかくするうちにこの楽い空想が、不便な事実となって現れ始めた。