たまたま着くものは墨がにじむほどびしょびしょに濡れていた。
湿った頁を破けないように開けて見て、始めて都には今洪水が出盛っているという報道を、鮮やかな活字の上にまのあたり見たのは、何日の事であったか、今たしかには覚えていないけれども、不安な未来を眼先に控えて、その日その日の出来栄を案じながら病む身には、けっして嬉しい便りではなかった。
夜中に胃の痛みで自然と眼が覚めて、身体の置所がないほど苦い時には、東京と自分とを繋ぐ交通の縁が当分切れたその頃の状態を、多少心細いものに観じない訳に行かなかった。