妻が本郷の親類で用を足した帰りとかに、水見舞のつもりで柳町の低い町から草平君の住んでいる通りまで来て、ここらだがと思いながら、表から奥を覗いて見ると、かねて見覚のある家がくしゃりと潰れていたそうである。
「家の人達は無事ですか、どこへ行きましたかと聞いたら、薪屋の御上さんが、昨晩の十二時頃に崖が崩れましたが、幸いにどなたも御怪我はございません。
ひとまず柳町のこういう所へ御引移りになりましたと、教えてくれましたから、柳町へ来て見ると、まだ水の引き切らない床下のぴたぴたに濡れた貸家に畳建具も何も入れずに、荷物だけ運んでありました。