――余は修善寺に二月と五日ほど滞在しながら、どちらが東で、どちらが西か、どれが伊東へ越す山で、どれが下田へ出る街道か、まるで知らずに帰ったのである。
杉本さんは予定のごとく宿へ着いた。
余はその少し前に、妻の手から吸飲を受け取って、細長い硝子の口から生温い牛乳を一合ほど飲んだ。
――余は修善寺に二月と五日ほど滞在しながら、どちらが東で、どちらが西か、どれが伊東へ越す山で、どれが下田へ出る街道か、まるで知らずに帰ったのである。
杉本さんは予定のごとく宿へ着いた。
余はその少し前に、妻の手から吸飲を受け取って、細長い硝子の口から生温い牛乳を一合ほど飲んだ。