程経て妻の心覚につけた日記を読んで見て、その中に、ノウヒンケツ(狼狽した妻は脳貧血をかくのごとく書いている)を起し人事不省に陥るとあるのに気がついた時、余は妻は枕辺に呼んで、当時の模様を委しく聞く事ができた。
徹頭徹尾明暸な意識を有して注射を受けたとのみ考えていた余は、実に三十分の長い間死んでいたのであった。
夕暮間近く、にわかに胸苦しいある物のために襲われた余は、悶えたさの余りに、せっかく親切に床の傍に坐っていてくれた妻に、暑苦しくていけないから、もう少しそっちへ退いてくれと邪慳に命令した。
程経て妻の心覚につけた日記を読んで見て、その中に、ノウヒンケツ(狼狽した妻は脳貧血をかくのごとく書いている)を起し人事不省に陥るとあるのに気がついた時、余は妻は枕辺に呼んで、当時の模様を委しく聞く事ができた。
徹頭徹尾明暸な意識を有して注射を受けたとのみ考えていた余は、実に三十分の長い間死んでいたのであった。
夕暮間近く、にわかに胸苦しいある物のために襲われた余は、悶えたさの余りに、せっかく親切に床の傍に坐っていてくれた妻に、暑苦しくていけないから、もう少しそっちへ退いてくれと邪慳に命令した。