すると小宮君が歌麿の錦絵を葉書に刷ったのを送ってくれた。
余はその色合の長い間に自と寂びたくすみ方に見惚れて、眼を放さずそれを眺めていたが、ふと裏を返すと、私はこの画の中にあるような人間に生れたいとか何とか、当時の自分の情調とは似ても似つかぬ事が書いてあったので、こんなやにっこい色男は大嫌だ、おれは暖かな秋の色とその色の中から出る自然の香が好きだと答えてくれと傍のものに頼んだ。
ところが今度は小宮君が自身で枕元へ坐って、自然も好いが人間の背景にある自然でなくっちゃとか何とか病人に向って古臭い説を吐きかけるので、余は小宮君を捕えて御前は青二才だと罵った。