おやこの主人もあの女の親類かなと内心大に驚ろくと主人は笑いながら「あれは奉納の鴉です。
昔しからあすこに飼っているので、一羽でも数が不足すると、すぐあとをこしらえます、それだからあの鴉はいつでも五羽に限っています」と手もなく説明するので、余の空想の一半は倫敦塔を見たその日のうちに打ち壊わされてしまった。
余はまた主人に壁の題辞の事を話すと、主人は無造作に「ええあの落書ですか、つまらない事をしたもんで、せっかく奇麗な所を台なしにしてしまいましたねえ、なに罪人の落書だなんて当になったもんじゃありません、贋もだいぶありまさあね」と澄ましたものである。