昔しからあすこに飼っているので、一羽でも数が不足すると、すぐあとをこしらえます、それだからあの鴉はいつでも五羽に限っています」と手もなく説明するので、余の空想の一半は倫敦塔を見たその日のうちに打ち壊わされてしまった。
余はまた主人に壁の題辞の事を話すと、主人は無造作に「ええあの落書ですか、つまらない事をしたもんで、せっかく奇麗な所を台なしにしてしまいましたねえ、なに罪人の落書だなんて当になったもんじゃありません、贋もだいぶありまさあね」と澄ましたものである。
余は最後に美しい婦人に逢った事とその婦人が我々の知らない事やとうてい読めない字句をすらすら読んだ事などを不思議そうに話し出すと、主人は大に軽蔑した口調で「そりゃ当り前でさあ、皆んなあすこへ行く時にゃ案内記を読んで出掛けるんでさあ、そのくらいの事を知ってたって何も驚くにゃあたらないでしょう、何すこぶる別嬪だって?