妻に、当人本気なのかなと言ったくらいである。
妻が評したごとく、こういうふうに、いつまでも、紙鳶が木の枝に引っかかって中途から揚がっているようなありさまでおしてゆかれては間へはいった自分たちの責任としても、しまいには放っておかれなくなるのは明らかだから、今度の旅行を幸い、帰りにHへ寄って、いわゆる「あのこと」をもっとはっきりかたづけてきたらよかろうという妻の意見に従うことにきめて家を出た。
汽車中では重吉の地方生活をいろいろに想像する暇もあったが、目的地へ下りるやいなや、すぐ当用のために忙殺されて、「あのこと」などはほとんど考えもしなかった。