番頭は当惑したような顔をして、しばらく考えていたが、はなはだ見苦しい所で、一夜泊りのお客様にはお気の毒でございますが、佐野さんのいらしったお座敷なら、どうかいたしましょうと答えた。
その口ぶりから察すると、なんでもよほどきたない所らしいので、また少し躊躇しかけたが、もとよりこの地へ来て体裁を顧みる必要もない身だから、一晩や二晩はどんなへやで明かしたってかまわないという気になって、このあいだまで重吉のいたというそのへやへ案内してもらった。
へやは第一の廊下を右へ折れて、そこの縁側から庭下駄をはいて、二足三足たたきの上を渡らなければはいれない代わりにどことも続いていないところが、まるで一軒立ちの観を与えた。