――戦死者中福井丸の広瀬中佐および杉野兵曹長の最後はすこぶる壮烈にして、同船の投錨せんとするや、杉野兵曹長は爆発薬を点火するため船艙におりし時、敵の魚形水雷命中したるをもって、ついに戦死せるもののごとく、広瀬中佐は乗員をボートに乗り移らしめ、杉野兵曹長の見当たらざるため自ら三たび船内を捜索したるも、船体漸次に沈没、海水甲板に達せるをもって、やむを得ずボートにおり、本船を離れ敵弾の下を退却せる際、一巨弾中佐の頭部をうち、中佐の体は一片の肉塊を艇内に残して海中に墜落したるものなり――
「どうです、聞いていますか」と加藤男爵は問えど、いつものことゆえ、聞いている者もあり、相手にせぬ者もある。
けれども御当人は例によって夢中である。