三月の末でございました、ある日朝から六蔵の姿が見えません、昼過ぎになっても帰りません、ついに日暮れになっても帰って来ませんから田口の家では非常に心配し、ことに母親は居ても立ってもいられん様子です。
そこで私はまず城山を捜すがよかろうと、田口の僕を一人連れて、ちょうちんの用意をして、心に怪しい痛ましいおもいをいだきながら、いつもの慣れた小道を登って城あとに達しました。
俗に虫が知らすというような心持ちで天主台の下に来て、
三月の末でございました、ある日朝から六蔵の姿が見えません、昼過ぎになっても帰りません、ついに日暮れになっても帰って来ませんから田口の家では非常に心配し、ことに母親は居ても立ってもいられん様子です。
そこで私はまず城山を捜すがよかろうと、田口の僕を一人連れて、ちょうちんの用意をして、心に怪しい痛ましいおもいをいだきながら、いつもの慣れた小道を登って城あとに達しました。
俗に虫が知らすというような心持ちで天主台の下に来て、