あゝ是れ『浮きたる心』だらうか、何故に自然を愛する心は清く高くして、少女(人間)を戀ふる心は『浮きたる心』、『いやらしい心』、『不健全なる心』だらうか、僕は一念こゝに及べば世の倫理學者、健全先生、批評家、なんといふ動物を地球外に放逐したくなる、西印度の猛烈なる火山よ、何故に爾の熱火を此種の動物の頭上には注がざりしぞ!
僕はお絹が梨をむいて、僕が獨で入いつてる浴室に、そつと持て來て呉れたことを思ひ、二人で溪流に沿ふて散歩したことを思ひ、其優しい言葉を思ひ、其無邪氣な態度を思ひ、其笑顏を思ひ、思はず机を打つて、『明日の朝に行く!
と叫けんだ。