頸筋は豚に似て聲までが其らしい老人は辨當をむしやつき、少し上方辯を混ぜた五十幾歳位の老婦人はすしを頬張りはじめた。
自分は先づ押ずしなるものを一つ摘んで見たが酢が利き過ぎてとても喰へぬのでお止めにして更に辨當の一隅に箸を着けて見たがポロ/\飯で病人に大毒と悟り、これも御免を被り、元來小食の自分、別に苦にもならず總てを義母にお任して茶ばかり飮んで内心一の悔を懷きながら老人夫婦をそれとなく觀察して居た。
『何故「ビールに正宗……」の其何れかを買ひ入れなかつたらう』といふが一の悔である。
頸筋は豚に似て聲までが其らしい老人は辨當をむしやつき、少し上方辯を混ぜた五十幾歳位の老婦人はすしを頬張りはじめた。
自分は先づ押ずしなるものを一つ摘んで見たが酢が利き過ぎてとても喰へぬのでお止めにして更に辨當の一隅に箸を着けて見たがポロ/\飯で病人に大毒と悟り、これも御免を被り、元來小食の自分、別に苦にもならず總てを義母にお任して茶ばかり飮んで内心一の悔を懷きながら老人夫婦をそれとなく觀察して居た。
『何故「ビールに正宗……」の其何れかを買ひ入れなかつたらう』といふが一の悔である。