高嶽の絶頂は噴火口から吐き出す水蒸気が凝って白くなっていたがそのほかは満山ほとんど雪を見ないで、ただ枯れ草白く風にそよぎ、焼け土のあるいは赤きあるいは黒きが旧噴火口の名残をかしこここに止めて断崖をなし、その荒涼たる、光景は、筆も口もかなわない、これを描くのはまず君の領分だと思う。
『僕らは一度噴火口の縁まで登って、しばらくはすさまじい穴をのぞき込んだり四方の大観をほしいままにしたりしていたが、さすがに頂は風が寒くってたまらないので、穴から少し下りると阿蘇神社があるそのそばに小さな小屋があって番茶くらいはのませてくれる、そこへ逃げ込んで団飯をかじって元気をつけて、また噴火口まで登った。
『その時は日がもうよほど傾いて肥後の平野を立てこめている霧靄が焦げて赤くなってちょうどそこに見える旧噴火口の断崖と同じような色に染まった。