中學に入つても二人は畫を書くことを何よりの樂にして、以前と同じく相伴ふて寫生に出掛けて居た。
此某町から我村落まで七里、若し車道をゆけば十三里の大迂廻になるので我々は中學校の寄宿舍から村落に歸る時、決して車に乘らず、夏と冬の定期休業毎に必ず、此七里の途を草鞋がけで歩いたものである。
七里の途はたゞ山ばかり、坂あり、谷あり、溪流あり、淵あり、瀧あり、村落あり、兒童あり、林あり、森あり、寄宿舍の門を朝早く出て日の暮に家に着くまでの間、自分は此等の形、色、光、趣きを如何いふ風に畫いたら、自分の心を夢のやうに鎖ざして居る謎を解くことが出來るかと、それのみに心を奪られて歩いた。