二人はしばし目と目見あわして立ちぬ。
源叔父は袂をさぐりて竹の皮包取りだし握飯一つ撮みて紀州の前に突きだせば、乞食は懐より椀をだしてこれを受けぬ。
与えしものも言葉なく受けしものも言葉なく、互いに嬉れしとも憐れとも思わぬようなり、紀州はそのまま行き過ぎて後振向きもせず、源叔父はその後影角をめぐりて見えずなるまで目送りつ、大空仰げば降るともなしに降りくるは雪の二片三片なり、今一度乞食のゆきし方を見て太き嘆息せり。
二人はしばし目と目見あわして立ちぬ。
源叔父は袂をさぐりて竹の皮包取りだし握飯一つ撮みて紀州の前に突きだせば、乞食は懐より椀をだしてこれを受けぬ。
与えしものも言葉なく受けしものも言葉なく、互いに嬉れしとも憐れとも思わぬようなり、紀州はそのまま行き過ぎて後振向きもせず、源叔父はその後影角をめぐりて見えずなるまで目送りつ、大空仰げば降るともなしに降りくるは雪の二片三片なり、今一度乞食のゆきし方を見て太き嘆息せり。