生国を紀州なりと童のいうがままに「紀州」と呼びなされて、はては佐伯町附属の品物のように取扱われつ、街に遊ぶ子はこの童とともに育ちぬ。
かくて彼が心は人々の知らぬ間に亡び、人々は彼と朝日照り炊煙棚引き親子あり夫婦あり兄弟あり朋友あり涙ある世界に同居せりと思える間、彼はいつしか無人の島にその淋しき巣を移しここにその心を葬りたり。
彼に物与えても礼言わずなりぬ。
生国を紀州なりと童のいうがままに「紀州」と呼びなされて、はては佐伯町附属の品物のように取扱われつ、街に遊ぶ子はこの童とともに育ちぬ。
かくて彼が心は人々の知らぬ間に亡び、人々は彼と朝日照り炊煙棚引き親子あり夫婦あり兄弟あり朋友あり涙ある世界に同居せりと思える間、彼はいつしか無人の島にその淋しき巣を移しここにその心を葬りたり。
彼に物与えても礼言わずなりぬ。