この時もしやと思うこと胸を衝きしに、つと起てば大粒の涙流れて煩をつたうを拭わんとはせず、柱に掛けし舷燈に火を移していそがわしく家を出で、城下の方指して走りぬ。
蟹田なる鍛冶の夜業の火花闇に散る前を行過ぎんとして立ちどまり、日暮のころ紀州この前を通らざりしかと問えば、気つかざりしと槌持てる若者の一人答えて訝しげなる顔す。
こは夜業を妨げぬと笑面作りつ、また急ぎゆけり。
この時もしやと思うこと胸を衝きしに、つと起てば大粒の涙流れて煩をつたうを拭わんとはせず、柱に掛けし舷燈に火を移していそがわしく家を出で、城下の方指して走りぬ。
蟹田なる鍛冶の夜業の火花闇に散る前を行過ぎんとして立ちどまり、日暮のころ紀州この前を通らざりしかと問えば、気つかざりしと槌持てる若者の一人答えて訝しげなる顔す。
こは夜業を妨げぬと笑面作りつ、また急ぎゆけり。